記事を紹介してもらった話と個人サイトや相互リンク文化の衰退
Freelance Hubさんに本ブログの記事を紹介していただきました。
対象の記事は「本当にやるべき6つのWordPressセキュリティ対策」です。
Freelance Hubさんはフリーランス向け求人・案件のマッチングサービスです。
上記の記事のような自社によるコンテンツ配信も行っているようで、きちんと記事をお読みになった上で紹介いただいている印象でした。
このようなサービスは多いので差別化を図っていると思われます。
ということで私もFreelance Hubさんの記事を貼りました。
互いに記事を紹介する結果になりましたね。
今回は単純に互いの存在を紹介し合うものですが、昔は互いにサイトのリンクを貼ることがよくありました。
相互リンクと言われるものです。
この相互リンクは、現代で例えると相互フォローのような意味合いです。
このように、昔のインターネットには自身のホームページにリンク集を作成し、他の方のホームページの一覧を載せる文化がありました。
今となっては相互リンク自体が死語になりましたが、いつ頃から使われなくなったのでしょうか?
ちなみにこのサイトへのリンクや引用に許可は不要です。
ご連絡なしに載せていただいて構いません。(むしろどんどん載せてください)
個人サイトの台頭と衰退
インターネットが普及し始めたばかりの頃は、個人が立ち上げたサイト上で交流が行われていました。
1990年代後半におけるインターネット上での交流は、主に個人等が作成する「ホームページ」や「BBS(掲示板)」上で行われており、数多くのサイトが開設された。例えば1997年には無料レンタル掲示板「ティーカップ」が、1999年には匿名掲示板「2ちゃんねる」が開設されている。特に「2ちゃんねる」は、掲示板上で起こった様々な出来事が他のメディアで取り上げられたことで広く知られるようになり、利用者が増加したとされる。
総務省|令和元年版 情報通信白書|インターネットの登場・普及とコミュニケーションの変化
個人サイトに体裁はありません。
日記だったり、自作絵や自作小説を載せるサイトなど、自身を表現するサイトがたくさんありました。
中には1996年から続くとほほのWWW入門のような技術サイトや、2001年から続くゲーム音楽館のような自作音楽投稿サイトもあります。
これらのサイトには、ユーザー同士が交流できる掲示板やチャットが設置されていることが多かったのです。
その後も発展を続け、舞台は個人サイトからブログやSNSといったサービスに成り代わっていきます。
このようなインフラに当たるサービスが発展・普及していく中で、インターネット上でのサービス内容も変化した。インターネット普及当初は、情報を一つの場所に「集約化」することを目指し、ポータルサイトなどが林立した。情報の集約が進む一方で、定額料金・常時接続というインターネット環境を背景に、2005年前後からは情報の「双方向化」の流れが生まれ、ブログやSNSといったコミュニケーションサービスが次々と登場した。そして、2005年に米国のティム・オライリーが提唱した「Web2.0」のように、ブログなどを通じて既存メディアではカバーできないニュースが発信され、個人の意見やアイデアが広く共有されることでより良い社会に向けたコミュニケーションが進んでいくことが期待された。
ブログサービスでは2003年に「ココログ」が、2004年に「アメーバブログ」がサービスを開始し、2004年半ばには投稿者が約100万人となった29。SNSでは2004年に「mixi」と「GREE」が相次いでサービスを開始し、国内の会員数は2500万人超となった。
総務省|令和元年版 情報通信白書|インターネットの登場・普及とコミュニケーションの変化
例えば日記はブログに、自作絵は「pixiv」に、自作小説は「小説家になろう」に投稿されるようになりました。
わざわざ個人サイトを立ち上げるまでもなく、自身がやりたいことをできるようになったのです。
個人サイト時代は個人同士をつなぐ手段がありませんでした。
なので、互いのサイトを紹介する形でリンクを貼り合う文化があったのです。
これが俗に「相互リンク」と言われるものです。
相互リンクが廃れたのはSNSが流行ったから
相互リンクの最盛期は2006年で、その後に廃れた理由はSNSが発展したからです。
「相互リンク」の検索ワードトレンドをご覧ください。
ノイズはあると思いますが、2006年6月をピークとし、その後は減少の一途をたどったことが分かります。
この時期はmixiというSNSが普及し始めた時期です。
2006年7月には500万人、その2年後の2008年7月には1500万人ユーザーを突破しています。
今となっては名前を知らない方も多いでしょうが、当時は勢いがあるSNSだったのです。
このmixiには日記機能やユーザー同士に繋がりを持たせる機能がありました。
(総務省PDF)SNS「mixi」のサービス概要 - サイト概要と運営者としての取り組み -
その2006年7月にはTwitterがサービスを開始し、日本では2009年頃から流行ります。
Twitterはかつて「ミニブログ」と呼ばれていました。
ご存じの通り、Twitterには「相互フォロー」できる機能があります。
2010年10月にサービスを開始したInstagramにも同じ機能があります。
これが相互リンクに取って代わる機能でした。
その他、2007年9月にpixivがサービスを開始し、元々個人サイトだった小説家になろうが2010年3月に法人化しました。
2006年から2010年頃にかけて個人サイトで行われていたことのサービス化が進んだことが分かります。
個人サイトを立ち上げることなくやりたいことができる上、ユーザー同士をつなぐことが簡単になったのです。
相互リンクは相互フォローという言葉に置き換わりました。
つまり相互リンクが廃れたのは2006年以降にSNSが普及したからです。
現代においてはもうすっかり見られなくなりました。
個人サイトを立ち上げるフリーランスたち
私がこのサイトを設立した理由は、ポートフォリオとしてのサイトが欲しかったからです。
フリーランスとして活動する上では、ホームページを持っていた方が有利に働きます。
しかしこのサイトの実態はポートフォリオサイトではなく、ブログがメインコンテンツです。
ブログを書いているのは「誰かのためになる情報」を書きたいからです。
かつては個人ブログを運営していました。
ポートフォリオサイトを作るにあたってブログの記事を全て移行しています。
最近だとnoteやZennのようなサービスがありますね。
そのようなサービスを使ってもいいのですが、ポートフォリオサイトとしては使えません。
ブログ兼ポートフォリオとしてこのサイトを運営しているのが実情です。
大多数は自身のポートフォリオサイトを必要としません。
今個人サイトを運営しているのは、ほとんどがフリーランスの方なのではないでしょうか?
コロナ渦の影響もあって、フリーランスの市場規模は増加しました。
ランサーズ株式会社は11月12日、「新・フリーランス実態調査 2021-2022年版」を発表した。2021年10月時点でフリーランス人口は約1577万人、経済規模は約23.8兆円であることが分かった。調査を開始した2015年と比較すると、フリーランス人口が約640万人、経済規模が約9.2兆円増加している。推移を見ると、2020年に一旦減少したものの、2021年1月に人口・経済規模がいずれも大きく増加。「コロナ禍でフリーランス市場は大きく拡大したことが分かる」(ランサーズ)としている。
フリーランス人口は1577万人、経済規模は23.8兆円~コロナ禍で市場が拡大 - INTERNET Watch
一時的なものかもしれませんが、2022年現在進行形で個人サイトは増えていると思われます。
私がブログを運営する主な理由としては上記ですが、ブログは検索エンジンから流入する方が多いので「情報が欲しい方に末永く見てもらえる」というのもあります。
相互リンク文化が復活する可能性
個人サイトが増えるということは、相互リンク文化が復活することもあるかもしれません。
ただ相互リンク文化があった理由の1つに、「無断リンク」という考え方があったことも挙げられます。
無断リンク(むだんリンク)とは、リンク先のウェブサイトの運営者等の許可を得ることなくリンク(クリッカブル・リンク)を張る行為[1]。ここでいうリンクはHTMLによるハイパーリンクである。
無断リンク - Wikipedia
法的には「運営者等の許可を得ないリンク」に問題はありません。
元々、運営者の意思で公開しているものを紹介しているだけだからです。
しかし実際には無断リンク禁止とするサイトがあり、無断でリンクを貼るのは良くないから許可を取る、という風潮がありました。
2003年前後に、無断リンクを控えるべきだという無断リンク否定派の立場と、そのような主張は無効であるという無断リンク許容派の立場がブログなどを舞台として論争を巻き起こした。否定派はインターネット上での儀礼的無関心の一環として無断でリンクをはられることを拒んでいるならそっとしておくべきだと主張し、肯定派はそもそもインターネットの設計思想からしてリンクするにも許可を要するのはナンセンスであると主張した(特に技術的な設計思想を過剰に強調する立場は俗にモヒカン族などといわれる)。[13]
無断リンク - Wikipedia
「法的には問題ないが、意思を尊重して無断でリンクを行わない」。
心理学的には「儀礼的無関心」という言葉で表されるようですね。
だからこそ、相互に許可を取ってリンクを貼る、という文化があったのです。
しかし現代では無断リンク禁止とするサイトも見かけなくなりました。
今となってはこのような考え方を持つ方もほとんどいないでしょう。
YouTuberなどの台頭で個人が力を持つ時代になったので、個人が情報を発信することが増えてきました。
インターネットの人口が昔よりも増えたので、相対的に情報がもたらす価値や影響力が上がっています。
Freelance Hubさんも、恐らくどこからか私の記事を見つけてきたのでしょう。
今回のようなパターンはサイトではなく互いに記事を紹介しただけなので、相互リンクとは言えません。
※Freelance Hubさんは個人ではなく企業なのでそこは勘違いなさらず
したがって元来の意味の相互リンク文化の復活は難しいでしょう。
現代では、個人同士がリンクを貼り合う行為に心理的なハードルがあるからです。
しかし今後、個人サイトで情報発信を行う方が増えれば「記事を紹介し合うパターン」も増えてくるのではないかと思います。
また昔のようなインターネットも見てみたいですね。
追記 (2024/04/29)
相互リンクの申し込みが最近は増えてきました。
私にも時々届きますが、基本的にはお断りしています。
この記事の結論は下記です。
- 現代では相互リンクする理由がほとんどない
- 情報発信を行う者同士で記事を紹介し合う形はよい
調べると「相互リンクによるSEO効果」を強調する情報が多く散見されますが、SEOというものは本当に効果があるか分からないから正解がない類のものですし、仮に効果があるとしても相互リンクって無理に増やすものじゃないと思います。
(私自身はエンジニアという立場から見てSEOという概念そのものに"かなり"懐疑的です)
90年代~00年代の個人サイトにおける相互リンクのように「仲がいいから」とか「共通点があるから」という意味合いを含めて行うものであれば、それは素敵なことです。
ただしこと現代において、主にその役割を担っているのは「SNSの相互フォロー」です。
「元来の相互リンク」を現代風に「相互フォロー」という言葉に置き換えてみます。
互いに発信している情報の関連性が高いとか知り合いだからという理由ならむしろ喜ぶところですが、ここで「SEO効果があるから相互フォローになろう」というのは少しズレていると思います。
話を現代に戻すと、それがこれから仲良くなりましょうという意味ならSNSで十分なのです。
サイト上で相互リンクするのはちょっと違う気がします。
それでもお互いの情報をお互いが発信するという意味で記事を紹介し合うのはいいなぁと思っています。
風味も鮮度もない情報
私はこの記事を「インターネット考古学」というカテゴリに設定しています。
インターネット上に少しずつ商用サービスが増え始めた2000年代、まだまだ個人サイト・個人ブログ全盛期だった2006年頃にmixiとかYouTubeとかが出てきて、2007年にはニコニコ動画が誕生して、2010年辺りからはインターネット上のコンテンツの商業化が進みました。
ちなみに2006年って「物売るっていうレベルじゃねぇぞ」が流行った年らしい。これが古のネタってマジ?
当時と今は全然違います。
昔のインターネットの空気感とか、SNSがいつ頃から使われ始めたとか、そういう情報をインターネットの片隅に残しておきたいという思いで記事(もとい紙切れ)を残しています。
過去を振り返ったところで直接利益にはなりません。
昔は昔で嫌な側面がインターネットにはあります。
そういうところも含めてどこかに書き残しておかないと忘れられてしまい、無かったことになってしまうのでは?
それはもっと嫌です。
ということで、もしも興味があればぜひ他の記事も読んでみてください。
暇つぶしになれば幸いです。