AIM Toolkit(ImDisk Toolkitの後継)がリリースされたので使ってみた
RAMディスク作成ツール「ImDisk Toolkit」の後継「AIM Toolkit」が2025年2月18日にリリースされました。
ベースがImDiskからArsenal Image Mounterに変わっていますが、機能は全く同じです。
ImDiskにあった不具合が直っていることが主な特徴になります。
AIM Toolkit download | SourceForge.net
なおImDisk Toolkitは開発を停止し、今後はAIM Toolkitに移行する方針です。
𝗧𝗵𝗶𝘀 𝗽𝗿𝗼𝗷𝗲𝗰𝘁 𝗶𝘀 𝗻𝗼 𝗹𝗼𝗻𝗴𝗲𝗿 𝗶𝗻 𝗱𝗲𝘃𝗲𝗹𝗼𝗽𝗺𝗲𝗻𝘁 𝗮𝗻𝗱 𝗶𝘀 𝘀𝘂𝗽𝗲𝗿𝘀𝗲𝗱𝗲𝗱 𝗯𝘆 𝗔𝗜𝗠 𝗧𝗼𝗼𝗹𝗸𝗶𝘁:
https://sourceforge.net/projects/imdisk-toolkit/
https://sourceforge.net/projects/aim-toolkit
私はImDisk Toolkitを使っていたので、とりあえずインストールしてみました。
一週間ほど使用してみましたが特に問題なく使用できています。
この記事では簡単な設定とベンチマーク結果を載せています。
結論から申し上げると基本的にはAIM Toolkit、速度を重視する場合のみImDisk Toolkitをおすすめします。
インストールと設定
インストール方法も設定画面もImDisk Toolkitと全く同じです。

Optionsは好みでチェックを付け外ししてください。
(一度設定すれば変更しないので、私はOptionの項目のチェックをすべて外しました)

「Install」ボタンを押すとインストールを開始します。
完了すると上記のダイアログが表示され、Windowsのアプリメニューに「AIM Toolkit」フォルダが増えます。

早速「RamDisk Configuration」を起動して設定していきましょう。
設定画面はImDisk Toolkitのそれと全く同じなので、ネット上の情報を参考に設定してください。

Sizeを8GBに変更

Cluster Sizeを64KB(最大値)に変更

変更なし
上記は私の設定です。
メモリが64GBと潤沢な環境なので割り当ては8GBにしました。
Cluster Sizeは基本的に大きな方が速度が速いので大きくしています。
※クラスタサイズが大きいとファイルを格納したときに実際に確保する容量が大きくなってしまいます。小さなファイルをたくさんRAMディスクに入れる場合は注意してください
Basicタブの「Allocate Memory Dynamically」にチェックを付けると速度が低下する代わりにメモリを動的に確保するようになります。
メモリを節約したい場合はチェックをつけるとよいでしょう。
設定して「OK」を押すとドライブ一覧に8GBのRAMディスクを作成(マウント)します。

大前提になりますが、RAMディスクはOSを再起動すると中身が消えてしまうので注意してください。
中身は消えてしまいますが、「Launch at Windows Startup」にチェックをつけたままにしていればWindows起動時にRAMディスクを自動的にマウントします。
ImDisk ToolkitとAIM Toolkitにはシャットダウン時にRAMディスクの内容を保存し、次回マウント時に内容を復元(書き戻し)する機能が実装されています。
Dataタブのフォルダを指定して「Synchronize at System Shutdown」にチェックを付けると使えます。
※使用する際にはWindowsの「高速スタートアップ」を無効にして使用してください(使用時に警告があります)
CrystalDiskMark
国内外で定番のストレージベンチマークツール「CrystalDiskMark」を使った速度ベンチマークです。
本来はHDDやSSDの性能を測るソフトウェアですが、RAMディスクにも使用できます。
どちらも同じ条件で測定しました。
測定環境
- OS
Windows 11 24H2 - マザーボード
ASRock B650 PG Lightning WiFi ※BIOS version: 3.16 (2024/12/27) - CPU
AMD Ryzen 5 9600X - メモリ
Crucial Pro DDR5-5600 64GB Kit (32GBx2) ※定格で使用
Toolkitの設定
- Allocate Memory Dynamically: OFF
- File System: NTFS
- Cluster Size: 64 KB
- Enable NTFS Compression: OFF
※速度に影響しそうな項目のみ抜粋
なお、CrystalDiskMarkは[設定]からNVMe SSD設定にして測定しています。
ImDisk Toolkit (Version 20241123)



AIM Toolkit (Version 20250218)



【参考】NVMe SSDとSATA HDDのベンチマーク
2025年時点でメジャーなSSDやHDDがどれほどの速度か、参考情報として載せます。
全く同じ環境で測定していますのでぜひ比べてみてください。
NVMe SSD (Crucial T500 2TB)
ファームウェアバージョンはP8CR003。
Gen 4世代なので速度は7500MB/sが限界値です。
T500はRND4K Q1T1が100MB/sくらい出るはずなのですが、私の環境だとなぜか遅いです。Ryzenだからかな……



SATA HDD (Western Digital Blue WD40EZAX)
ファームウェアバージョンは01.01A01。
SATA接続なので速度は600MB/sが限界値です。
さすがに遅いですが、これでもHDDの中では普通よりちょっと速いくらい速度です。昔はもっともっと遅かった
※これだけCrystalDiskMarkの[設定]からデフォルト設定にして測定しています



ImDisk ToolkitとAIM Toolkitの比較結果
はじめに。
1つ目と2つ目の「SEQ1M Q8T1」「SEQ128K Q32T1」はシーケンシャル性能で、3つ目の4つ目の「RND4K Q32T16」「RND4K Q1T1」はランダム性能です。
基本的にはランダム性能が体感速度に近いです。
詳しくはドスパラのページの説明が分かりやすいのでどうぞ。(丸投げ)
速度
Tests | ImDisk Toolkit Read / Write | AIM Toolkit Read / Write | 性能向上率 Read / Write | ||
---|---|---|---|---|---|
SEQ1M Q8T1 | 15057.10 MB/s | 25197.49 MB/s | 9557.15 MB/s | 12215.12 MB/s | -37% / -52% |
SEQ128K Q32T1 | 12920.49 MB/s | 18471.03 MB/s | 11267.49 MB/s | 10429.88 MB/s | -13% / -44% |
RND4K Q32T16 | 3133.05 MB/s | 2098.06 MB/s | 932.49 MB/s | 708.85 MB/s | -70% / -66% |
RND4K Q1T1 | 836.86 MB/s | 756.86 MB/s | 510.42 MB/s | 472.61 MB/s | -39% / -38% |
性能向上率のパーセンテージは四捨五入
すべてのテスト項目で速度が低下し、ほとんどのテスト項目で4割ほどの速度低下になっています。
特に性能差のあるRND4K Q32T16は16スレッドで動作させるテスト項目です。
恐らくAIM Toolkit(というよりArsenal Image Mounterのドライバ)はマルチスレッドに不向きなのでしょう。
ただし、ここで1つ補足します。
RND4K Q32T16以外はAIM ToolkitでもSSDより速いです。
体感性能に影響の大きいRND4K Q1T1は2025年時点で最高峰のNVMe SSDでも100MB/s程度(※)という性能のところ、AIM Toolkitは500MB/sほどの性能を叩き出しています。
※Crucial T500やWestern Digital SN7100等のこと。300MB/s近く出るOptane SSDは除く
マルチスレッド処理を想定したRND4K Q32T16ではかなり弱い結果となってしまいましたが、基本的にはSSDより速いと見てよいでしょう。
AIM Toolkitよりも速いImDisk Toolkitは圧倒的な速さです。
ただし後述しますが、ImDiskは重大な不具合を抱えているため、AIM Toolkitを使うことをおすすめします。
レイテンシ
Tests | ImDisk Toolkit Read / Write | AIM Toolkit Read / Write | レイテンシ増加率 Read / Write | ||
---|---|---|---|---|---|
SEQ1M Q8T1 | 555.82 | 332.16 | 875.63 | 684.89 | +58% / +106% |
SEQ128K Q32T1 | 323.82 | 223.58 | 371.79 | 401.80 | +15% / +80% |
RND4K Q32T16 | 667.08 | 994.20 | 2205.20 | 2883.32 | +206% / +190% |
RND4K Q1T1 | 4.83 | 5.34 | 7.95 | 8.60 | +65% / +61% |
性能向上率のパーセンテージは四捨五入
すべてのテスト項目でレイテンシが悪化しました。
速度と同様、RND4K Q32T16の性能の低さが際立ちます。
マルチスレッドでたくさんのファイルの読み書きを行うタスクには不向きかもしれません。
※試していませんが、大量のファイルを含むzipファイルの圧縮展開速度に影響しそうですね
ImDiskにある不具合
後継が作られたのには理由があります。
ImDisk ToolkitのRAMディスク上のファイルでは管理者権限を使用することができません。


このエラーはImDisk Toolkitが使用しているImDisk Virtual Disk Driverの作りが古いことに起因します。
ImDiskではWindowsの「ディスクの管理」にRAMディスクが表示されないのですが、実はこれに起因する不具合であり、既知の問題としてドキュメントに記載されています。
Some softwares are incompatible with ImDisk volumes. This comes from the driver that creates only simple volumes that are not handled by the disk manager. This will not be fixed.
https://sourceforge.net/p/imdisk-toolkit/doc/Home
対して、AIM Tookitが使用しているArsenal Image Mounter Driverは新しい作りになっています。
「ディスクの管理」でもRAMディスクが表示されるようになっており、上記のエラーも発生しません。

速度面ではImDisk Toolkitに分配が上がり、後継となるAIM Toolkitは敗北を喫する結果になりました。
しかし、速度を最重視する用途以外ではAIM Toolkitをおすすめします。
このご時世にRAMディスクを使う意味
今はSSDがストレージ(補助記憶装置)の主流ですが、2010年台前半まではHDDが主流でした。
HDDは性能が低く、ランダム性能に至っては速くとも1MB/s程度しか出せません。
これに比べてRAMディスクは異次元的に速かったので、よく使われました。
また今は亡き32ビットOSの制限としてメモリが3.4GB程度までしか認識されず、4GB以上のメモリを搭載するとOSに認識されない管理外のメモリ領域が出てくるため、これを有効活用する目的でも使われました。
しかしHDDから10~20倍の性能になったSATA SSDの登場で業界に激震が走りました。
ディスクを物理的に高速回転(5400回/分や7200回/分)させてヘッドと言われる部品で読み取りと書き込みを行う構造が、半導体のみで成立するようになったので、物理的な制約に縛られずに性能を向上させることができるようになったのです。
性能だけでなく消費電力も低く動作音がせず振動にも強いという革新的な技術は瞬く間に普及しました。
SSDの登場でRAMディスクの圧倒的な速度という優位性が薄れ、徐々に使われなくなっていきます。
RAMディスクはHDDとともに廃れたのです。
2025年現在で登場し始めたGen 5世代のNVMe SSDは、SATA SSDと比較して5~30倍の性能を誇ります。
※記事執筆時点ではCrucial T700、KIOXIA EXCERIA PLUS G4、Samsung 9100 PROなどが該当
SSDと比較するとメモリ(DRAM)は速度がとても優れており、DDR5のRAMディスクのランダム性能はさらに数十倍以上の性能がありますが、ここまで速いと高速なRAMディスクを使っても性能の高さを体感できません。
以上から、現代において速度面でRAMディスクを使う意味はかなり薄れてしまっています。
私がImDisk ToolkitではなくAIM Toolkitを奨める理由の一つです。
では現代でRAMディスクを使うメリットが何なのかというと、SSDの寿命を延ばす目的で有用です。
HDDと違って、SSDには書き込み回数に論理的な上限があります。(書き込み回数≒寿命)
激しい書き込みが発生する一時的に作られるファイルの出力先をRAMディスクにしておくだけでSSDの寿命を延ばすことができます。
メーカー側で保証している書き込み可能な容量(TBW)は通常用途で到達するようなものではありませんが、TBW到達前にSSDが突然死してしまうこともあります。(突然死の多くはコントローラの故障と言われています)
壊れる予兆があるHDDと違って、SSDが使えなくなる時には本当にいきなり使えなくなります。
可能であればSSDに対する無駄な書き込みを避けたいものです。
Linux/UNIXにはtmpfsがあり、RAMディスクがOS標準の機能になっています。
「RAMディスクが廃れた」というのはWindowsの話で、Linux/UNIXでは当たり前に使われています。
実はWindows ServerではサーバーマネージャーからRAMディスクを作成可能(ちょっと面倒ですが)で、WindowsではRAMディスクがサーバー用途の機能という位置づけになっていることが分かります。
「再起動すると中身が消える」という仕様が使いづらいし用途も限られるので、あえてこういう扱いにしているのだと思います。
ちなみに私はブラウザのダウンロード先フォルダと7-Zipの作業フォルダにRAMディスクを指定しています。
この2つは地味に書き込みが激しいので、大容量のRAMディスクを作れる場合は指定することをおすすめします。
かつて存在したRAMディスク作成ツール
2000年代から2010年代前半においてはERAMとGavotte RAMDiskの2つが有名だったかと思います。
企業提供ということでBUFFALOやI-O DATAのツールを使用していた方も多いのではないでしょうか。
私はERAM改造版を最も長く使っていました。RAMディスクの中で最も速く安定性もあって良かったです
かつての個人提供のソフトウェア
- ERAM ※作成者:えらー15氏(日本)
→初版は2000年頃に公開?(1.02の日付しか分からず)し、2004年のバージョン2.23で更新停止。ドライバに署名がない(昔はない方が普通)ため、64ビットOSでは実質使用不可 - ERAM改造版 ※作成者:68氏(とスレ民は呼ぶが明確なコテハンは使っていない)
→初版は2008年頃に公開。2009年のfuck0665で更新停止。現在はダウンロード不可。2ちゃんねるの有志による改造パッチであるため公開に際しては一悶着あったがERAMの作者からのコメントで解決。元となるERAMと同じく64ビットOSでは実質使用不可 - Gavotte RAMDisk ※作成者:ChihHung Weng氏(台湾)
→初版は2006年頃に公開(Wayback Machine)。2008年の1.0.4096.2(1.0.4096.3と1.0.4096.4も存在するが中身は同じ)で更新停止。2014年頃からホームページが閉鎖 - ImDisk ※作成者:Olof Lagerkvist氏(スウェーデン)
→初版は2006年頃に公開。RAMディスクも作成可能な仮想ドライブ作成ツール。2025年現在も更新はされているがWindows Vista以降のOSでは非推奨。同氏はArsenal Recon社でArsenal Image Mounterを開発しており、こちらに移行することを推奨している - ImDisk Toolkit ※w77氏(フランス)
→初版は2016年頃に公開。上記ImDiskのドライバ(ImDisk Virtual Disk Driver)を使用する、RAMディスクの作成に特化したソフトウェア。AIM Toolkitの公開に伴い更新停止
かつての企業提供のソフトウェア
- BUFFALO RAMDISK ユーティリティー
→BUFFALO製のメモリ使用で制限解除。2013年を最後に更新停止 - 電机本舗 RAMDA
→2016年頃から会社のホームページが消滅。有償版は現在購入不可? - ASUS ROG RamDisk
→表向きはASUS製マザーボードのみの提供だが実際にはメーカー関係なく使用可能。2018年を最後に更新停止&ダウンロード不可? - Dataram RAMDisk
→2016年を最後に更新停止。2024年末頃から公式ホームページが消滅 - AMD Radeon RAMDisk
→Radeon Memory使用で制限解除。DataramのOEM製品。2019年頃から公式ホームページが消滅 - I-O DATA RamPhantomシリーズ
→同シリーズ最後の製品となったRamPhantomEXが2018年に提供終了。2022年には有償版も販売終了
他にもあるようでしたが、私が知っていたソフトウェアは上記です。
2025年現在で主流なのは下記でしょうか?
- Arsenal Recon社のArsenal Image Mounter
※有償版もあるがRAMディスクは無償版でも作成可 - w77氏のAIM Toolkit(ImDisk Toolkitの後継)
※上記をRAMディスクに特化させたフリーソフトウェア。Arsenal Image Mounterのドライバ(OSSとして公開)を使用 - PassMark Software社のOFSMount
※フリーソフトウェア。ImDisk Virtual Disk Driverを使用 - 【シェアウェア】SoftPerfect社のSoftPerfect RAM Disk
- 【シェアウェア】Romex Software社のPrimo Ramdisk(旧VSuite Ramdisk)
大半の企業が開発をやめていることからペイできないのだろうと思ってしまいますね。
ニッチな需要なので、無償有償問わず今でも作られ続けていることに感謝したいです。